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浪費

 仕事が終わって制服からスーツに着替えていると、俺のしているネクタイを見て柳田さん(仮名)が「若いのにずいぶん地味なネクタイしてるんだねぇ」と言った。余計なお世話である。こちらはネクタイに何のステイタスも求めておらず、単なる通勤着の一部として身に付けているに過ぎないのだ。

 さて、そう言う柳田さんのしめているネクタイを見るとやけに派手なのである。ギラギラしているわけではないが細かい模様が入っていて、なるほど生地も良さそうだ。ネクタイの裏側に刺繍してある何とかいうブランドのロゴマークを見せてくれた。なるほど聞き覚えのあるブランドだ。一本二万円くらいするんだって。で、そんなブランドもののネクタイを百本くらい持っているんだと。スーツもフルオーダーで作っているから結構金かかってんだよ、だって。へえそうなんすか、ちなみに今着てらっしゃるそのスーツだと幾らくらいするんですかとたずねてみると、二十(万円)くらい、と実にさり気ない風を装って彼は俺に言うのだった。その手のスーツももちろん、何十着もあるから、まあちょっとした一財産だよね、こういう格好で飲み屋に行くとさ、ご職業はって聞かれた時に普通の会社員だって言ってもまず信じてもらえないね、うそでしょ普通のサラリーマンの人はそんな(お金のかかった)格好なんてしませんものってことでね、たいがい不動産屋さんかなんかの社長とかに見られちゃう。あとはヤクザとかね、昔パンチパーマかけてたときはまずヤクザと思われてたもんだよ…

 鼻の穴まで自慢げにふくらませて語る柳田さんの話に、なるほど浪費とはこういうことをいうのかと良いオベンキョしたような気にもなった。しかしあまり長く聞いているのもシンドそうな種類のお話なので、さっさと着替えを済ませて俺は帰路につくのであった。

<次回は「ひ」または「うひ」で始まるタイトルですよ>
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by edoya-ex | 2008-05-24 19:13 | シリトリヨタバナシ
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