街角。一人の女が子連れの母親に話しかける。 女「まあかわいらしいこと、おいくつですか?」 母「あら、私なんてもう可愛いと言われる年ごろなどとうに過ぎてしまっておりますのよ」 女「あ、いえ、その、お連れのお子さんのことを…」 母「そうですわよね。いやだわあたしったら。ええ、この子はもうじき四歳になるんです」 女「可愛い盛りですねえ」 母「そうは言いましても、年をとってからの子供ですから私なんかもう盛りも過ぎてしまって…」 女「あの、その、お子さんの可愛い盛り…」 母「あらまあそうですわね、すみませんねえ、年のせいかしらついつい自分のことばかり考えてしまいますわ。そうですそうです、この子は今が可愛い盛り」 女「まるで女の子のようなお顔立ちで」 母「いやですわ、こんなおばさんに『女の子のような』なんて。ふふふ」 女「いえ、その、お子さんが」 母「……わかっていますっ。この子が、女の子のように可愛いと、仰るの、ですよね?」 女「はいっ、そう、です」 母「…」 女「お名前は、なんとおっしゃるんですか?」 母「まさこ」 女「?」 母「…は私の名です。この子は、『ゆうたろう』というんですよ」 女「いいお名前ですね」 母「父が『まさみつ』という名だったのです。そこから一文字頂いて『まさこ』と…」 女「…」 母「…オホン、『ゆうたろう』の名をお褒め頂いたのですよね。わかります、わかります、わかっていますとも」 女「…」 母「…」 女「…『ゆう』の字は『勇ましい』の『勇』ですか?」 母「『オス』の『雄』」 女「オスの…」 母「男なら雄々しく生きよ雄太郎!」 女「!(ビックリ)」 母「私の娘時分からの座右の銘です」 女「はあ…」 子「…おかあさん…」 母「なんですか」 子「おしっこ」 母「お母さんはまだおしっこなんてしたくありませんよ。さっきのお店で済ましてきましたからね」 子「…」 女「あの、お母さまではなくてゆうたろうくんがおしっこに行きたいんではないでしょうか?」 母「あらまあ、そうなの?ゆうたろう?」 子「…(うなづく)」 女「あらあら、おばちゃんたちが長話していたせいね、ごめんねゆうちゃん」 母「初対面の年上の女性をつかまえて『おばちゃん』とは何事ですか!」 女「いえ、あの、ゆうたろうくんから見た私自身をおばちゃんと言っただけなのですが…」 母「はっ……、そ、そうですわね、そうですわね。さ、ゆうたろう、お手洗い行きますよ。それじゃこれで、失礼いたします。おほほほ」 (実話ではない) <次回は「う」または「ろう」で始まるタイトルですよ> Nyancoin Bakery 江都屋へ戻る
by edoya-ex
| 2008-02-11 23:11
| シリトリヨタバナシ
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